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著者 | 村田 右富実(関西大学教授) |
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定価 | 1,000円(税抜) |
発行年月日 | 2019年6月15日 |
判型 | 新書判並製 184ページ |
ISBN | 978-4-908443-46-6 |
Cコード | 0095 |
刷り | 1刷 |
『よみたい万葉集』監修、『おさんぽ万葉集』著の、村田右富実関西大学教授最新作。
新元号「令和」の典拠となった万葉集の「梅花歌の序」を訳とともに掲載しています。
この文章は、大宰府にいる大伴旅人が奈良の都にいる友人吉田宣に送った手紙の序です。
一説には、山上憶良が書いたものではないかという話もありますが、旅人が送った手紙であることは間違いありません。
「令和」の典拠が、万葉集の「梅花歌の序」ではなく、その典拠にあたる「帰田賦」の載っている『文選』だという話も話題になっています。
ところが、「梅花歌の序」には、他にも10以上の中国文学の典拠が複雑に入り組んでいるのです。
本書では、その一つ一つにも目を向け、訳と解説を載せ、背景も丁寧に記載しました。
典拠が多いことは、現代人の目から見ると「知識のひけらかし」とも、「オマージュ」「リスペクト」のようにも感じられますが、一つ言えるのは、オリジナリティがあるとはとうてい思えないということ。
ところが典拠とは万葉人の教養、典拠がないのは当時の人としては無教養の証だったのです。
個別の典拠の意味を探ってもしかたがないけど、それを引用しながら書いた旅人の心根を読み解くことが面白い。
ここまでくると、大伴旅人の大宰府での生き様が知りたくなります。そこで本書の附章、「大伴旅人という生き方ー万葉集への扉ー」では、酒宴の様子や、都にもどる部下への言葉、旅の途中のこの地で亡くなった妻への思いなどを、大伴旅人や山上憶良の万葉歌をあげながら考えてみました。
また、元号についてももちろん話を展開しています。
日本最初の元号「大化」、その後「白雉」「朱鳥」など散発的に用いられた後、「大宝」から元号はレギュラー化していきます。
西暦749年は、1月1日から4月14日までが「天平」21年、4月14日から7月2日は「天平感宝」元年、7月2日から「天平勝宝」元年と、年に二回も改元。
ちなみに、「白雉」は山口県で文字通り白い雉が見つかったことで改元。「天平勝宝」は、陸奥の国で黄金が見つかったから、「天平」は平城京で「天王貴平知百年」という文字が背中に浮き出た亀が見つかったことで改元。
いろんな理由で改元されました。でも、その目的は改元恩赦による政治的求心力を強めるところにあったのです。
そんな改元話のあれこれから万葉集の歌との関連まで、上代研究の一線で活躍する著者が、綴りました。
理解しているようであやふやな、万葉集と万葉仮名との関係など、万葉集で知っておきたい知識も満載です。
予備知識なしに読むことができるように意識しました。
改元をきっかけに本書を読んで、一人でも多くの人が万葉集に興味をもって下さったらいいなと思って作りました。
■はじめに
■第一章 ことのはじまり
■第二章 暦と元号
第一節 暦
第二節 元号
第三節 令和
■第三章 「梅花歌の序」まで
第一節 『万葉集』
第二節 大伴旅人
第三節 梅花宴
■第四章 「梅花歌の序」
第一節 「梅花歌の序」の内容
第二節 時に、初春の令月にして、気淑く風和ぐ。
■第五章 王羲之と「蘭亭序」
第一節 王羲之
第二節 「蘭亭序」
■第六章 『文選』と張衡の「帰田賦」
第一節 『文選』
第二節 張衡
第三節 「帰田賦」
■第七章 教養
第一節 「梅花歌の序」のオリジナリティ
第二節 現代の教養
第三節 奈良時代の教養
■第八章 むすびにかえて
附章 大伴旅人という生き方―『万葉集』へのトビラ―
第一節 『万葉集』へのトビラ
第二節 高級官僚・大伴旅人
第三節 大宰帥・大伴旅人
第四節 大納言・大伴旅人―帰京と死―
第五節 人間・大伴旅人―むすび―
■付録(1)主要引用テキストの原文など
■付録(2)主要参考文献
■あとがき