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「平和都市」ヒロシマのまがりかど

副題 広島市平和推進基本条例の制定過程を検証する
著者 宮崎 園子
田村 和之
金子 哲夫
本田 博利
向井 均
橋本 和正
渡部 久仁子
湯浅 正恵
定価 1,700円(税抜)
発行年月日 2024年11月
判型 四六判並製 248ページ
ISBN 978-4-908443-91-6
Cコード 0036
刷り 1刷

内容紹介

 イスラエルのガザ侵攻が始まった2023年、「平和都市・広島」では、その足元を大きく揺るがすいくつもの「事件」が起きた。

  まずは2月、広島市教委が、故・中沢啓治さんの『はだしのゲン』を、小学校の平和学習教材から削除したことが、地元紙の報道によって明らかになった。中学校の平和学習教材からは、アメリカの核実験により、太平洋を航行中の日本のマグロ漁船、第五福竜丸などが被曝したビキニ事件(ブラボー実験)の記述が消えた。
5月には、広島1区選出の岸田文雄総理大臣(当時)が議長を務めた広島開催のG7サミットにおいて、主要7カ国と欧州連合が、「広島ビジョン」の名の下、核抑止力を肯定する内容の共同声明を発出した。
今、「平和都市」広島で何が起きているのか。
広島が訴えてきた「平和」とは何なのか。
混沌とした世界の中で、広島はこの先、どんな役割を担おうとしているのだろうか。

 一連の出来事を受けて、この地で平和活動をさまざまな形で展開してきた市民たちは、大きな疑念を抱き始めた。広島はいつから、こうなってしまったのだろうか。それを考えるとき、実は大きな転換点が近年あったことに気付かされる。
 それは、広島市議会初の政策条例として2021年6月に成立した、広島市平和推進基本条例だ。一部の市民は、その成立過程を見守り、条例の文言をつぶさに検討し、問題提起をしてきた。本書の執筆陣は、その一部だ。

 研究者、元広島市職員、元国会議員、市民活動家、記者など、職業も世代も様々だ。だが、広島がこの先もヒロシマであり続けるのだろうか、という問題意識を共有する仲間として、私たちは「平和推進条例検証会」なる会合を立ち上げ、定期的に集って論議を重ねてきた。情報公開請求によって公文書を入手し、その制定過程を検証するのが主な目的だった。この条例から透けて見えるものは何か。
 本書は、この間の論議を踏まえて、メンバーがそれぞれの領域に寄せて執筆した論考をまとめたものだ。

 

目次

まえがき
発刊に寄せて
「広島市の平和行政は前進するのか」         平岡 敬

<本文編>
第1章 広島のアイデンティティ・クライシス     宮崎 園子
第2章 「平和都市」ヒロシマの自己否定      田村 和之
第3章 【覚書】広島市平和推進基本条例の制定過程  田村 和之
第4章 市政と憲法                 金子 哲夫    
第5章 広島で「平和」の条例をつくること      本田 博利
第6章 「黒い雨」はどのように扱われたか      向井 均
第7章 戦争の実相                 橋本 和正
第8章 「このままではいや。-はじめてのロビー活動記-」 渡部 久仁子
第9章 広島市平和推進基本条例と「ヒロシマの心」    湯浅 正恵

あとがき

<資料編>
1 2021年6月29日に公布された広島市平和推進基本条例(2021年条例第50号)
2 条例案の変遷
3 広島市議会本会議における「提案趣旨説明」
4 広島市条例にみる「平和」の定義
5 広島市議会採決の「決議」「意見書」及び「請願」
6 広島弁護士会長声明
7 広島市議会に寄せられた市民・市民団体の意見(一部)
8 広島平和記念都市建設法(1949年8月6日 法律第219号)